ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

2022-01-01から1年間の記事一覧

今泉力哉監督『窓辺にて』

12月1日映画の日の夜に、『街の上で』がたまらん好きな今泉力哉監督の新作『窓辺にて』を鑑賞してきました。 『街の上で』よりもずっと笑いもテンポも抑えてきたなぁと思っていたら、序盤の気まずさと居心地悪さを強調する映画のモードが中盤からぶんぶんバ…

逢坂冬馬 著『同志少女よ、敵を撃て』早川書房

今年の夏休みに岸田総理が本作を読む予定だという報道があってすっかり興が冷めていたのですが、プーチン大統領が予備役の動員を決定しロシア国民が反対のデモをしているというニュースに触れたとき、自分の中のやりきれなさに整理がつかず、積読書棚から引…

映画『茜色に焼かれる』石井裕也 監督

尾野真千子 田中良子和田庵 田中純平片山友希 ケイオダギリジョー 田中陽一永瀬正敏 中村 【あらすじ(公式H.P.より)】1組の母と息子がいる。7年前、理不尽な交通事故で夫を亡くした母子。母の名前は田中良子。彼女は昔演劇に傾倒しており、お芝居が上手だ…

『神は銃弾』ボストン・テラン著(田口俊樹 訳)、文春文庫

【あらすじ(背表紙より)】憤怒――それを糧に、ボブは追う。別れた妻を惨殺し、娘を連れ去った残虐なカルト集団を。やつらが生み出した地獄から生還した女を友に、憎悪と銃弾を手に…。鮮烈 にして苛烈な文体が描き出す銃撃と復讐の宴。神なき荒野で正義を追…

映画『クリーン ある殺し屋の献身(原題:CLEAN)』

映画『クリーン ある殺し屋の献身(原題:CLEAN)』監督:ポール・ソレット 出演:エイドリアン・ブロディ 良かった! ハヤカワ・ポケットミステリの味わい爆発のノワール調バイオレンス作品。現実世界の端々にある暴力のトリガーと主人公クリーン(エイドリ…

押井守 監督『機動警察パトレイバー2 the Movie』

押井守 監督『機動警察パトレイバー2 the Movie』 監督 押井守、原作 ヘッドギア、脚本 伊藤和典 声の出演 後藤喜一 大林隆之介 南雲しのぶ 榊原良子 泉野明 冨永みーな 篠原遊馬 古川登志夫 荒川茂樹 竹中直人 柘植行人 根津甚八 もう20年ぶりくらいに観直…

新井由己 著『とことんおでん紀行』凱風社

おでんのタネの「餃子巻き」 なにそれ!!?? みなさん食べたことあります? 私は九州生まれ、学生時代と新卒の一時期は関西で過ごし、現在は関東在住で酒場と飯屋をこよなく愛する中年おっさんですが、「餃子巻き」は見たことも食べたこともありません。 …

沢木 耕太郎 著『テロルの決算』(文春文庫)

2022年7月8日の安倍晋三元首相の銃撃殺害事件の報を受けて私がまず感じたのが、山上徹也容疑者の動機、背後関係その他の真相究明は捜査を待つとしてこの重大な事件を自分の腹にどう収めればいいのかという混乱でした。自分には現役国会議員が衆目の中で銃撃…

映画『ボイリング・ポイント/沸騰』

映画『ボイリング・ポイント/沸騰』監督:フィリップ・バランティーニ 主演:スティーヴン・グレアム 編集、CG無しの90分ワンショット。ガチでノーカット長回しでもって映画を一本撮っています。こういうのこそ劇場で観る値打ちありの大好物。もともとは1日…

村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋社

本作の主人公、18年間コンビニでアルバイトをして生計を立てている36歳の古倉恵子は「変わった人」なのでしょうか? 変わっている、変わっていない、というのを私という個人の価値基準で判断することが許されるとしたら「変わっている」と思いました。という…

映画『神々の山嶺 (いただき)』2021年フランス

映画『神々の山嶺 (いただき)』2021年フランス 小説原作:夢枕獏 コミック原作:谷口ジロー監督:パトリック・アンベール ヒューマントラストシネマ有楽町で観てきました。劇場の特性なんでしょうか、大都会東京の映画ファンの裾野の広さ故なのでしょうか…

町屋良平『1R1分34秒』新潮社

ボクシングを題材にした好きな映画がいくつかあります。安藤サクラ主演の『百円の恋』、フランス作品の『負け犬の美学』は大好きな映画です。プロを続けられなくなる年齢制限を前にタイトル戦にチャレンジする不器用な会社員ボクサーを追ったノンフィクショ…

映画『モーリタニアン 黒塗りの記録』ケヴィン・マクドナルド監督

監督 ケヴィン・マクドナルド出演 ジョディ・フォスター ナンシー・ホランダー タハール・ラヒム モハメドゥ・ウルド・スラヒ ザカリー・リーヴァイ ニール・バックランド サーメル・ウスマニ シェイリーン・ウッドリー テリー・ダンカン ベネディクト・カン…

漫画『事件屋稼業』関川夏央、谷口ジロー

エッセイしか読んだことがなかった関川夏央原作で、なんと!谷口ジロー作画の『事件屋稼業』というコミックスがあると聞いてさっそく古本を大人買いしました。チャンドラー作品と関係があるのかないのかはまだわかっていないのですが。 これは・・・格好いい…

ジェフリー・ロバーツ『スターリンの将軍 ジューコフ』

ロシアがウクライナに侵攻してすぐに黒川祐次『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国 (中公新書)』を読みました。その時はこの戦争はすぐに終結するものだと思い込んでいました。 ところが悲惨な戦争は続きます。西崎 文子 他『紛争・対立・暴力――世…

映画『愛なのに』城定秀夫監督

監督: 城定秀夫脚本: 今泉力哉、城定秀夫出演: 瀬戸康史、さとうほなみ、河合優実、中島歩、向里祐香、丈太郎 1週間前の日曜日、城定秀夫監督『愛なのに』を新宿武蔵野館で観てきました。素敵な劇場でした。 『街の上で』で大ファンになった今泉力哉さん…

『THE BATMAN』マット・リーヴス監督

監督・脚本・製作 マット・リーヴス 出演 ロバート・パティンソン ブルース・ウェイン/バットマン ゾーイ・クラヴィッツ キャットウーマン ポール・ダノ リドラー ジェフリー・ライト ジェームズ・ゴードン ジョン・タートゥーロ カーマイン・ファルコーネ …

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』アグニェシュカ・ホランド監督

スターリンに農業集団化政策を強行されて飢饉に陥ったウクライナに侵入取材した実在の英国人ジャーナリストを題材にした映画です。ウクライナに入ってからの描写で二度、耐えられなくて鑑賞を止めました。辛かったです。数百万人の飢餓死を招きながら、当時…

松居大悟 監督『 ちょっと思い出しただけ』主演 池松壮亮、伊藤沙莉

"Нет войне" 21時スタートのレイトショーでこの作品を観終わったあと、劇場のある大型ショッピングモールからの運転の帰り道、雨の照り返しで見にくいアスファルトの中央線をたどりながら車内で一人「うわー、うわー」と独り言を言っていました。うまく説明…

濱口竜介 監督『ドライブ・マイ・カー』主演:西島秀俊

翻訳文体で日常会話を交わす奇妙な登場人物たちが無表情演技で自分や相手の心情を語って聞かせる「魂の再生」ストーリー。 タイトルにはなっているけれども、ちょっとレオス・カラックスやウォン・カーウァイ風味のシーンがあるだけでほぼ意味の無いドライブ…

マイケル・マン監督『コラテラル』出演トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス

ネトフリ、アマプラ、U-NEXTに観なきゃいけない未見映画が山程あるのに、もう何回目かわからないこの作品を観てしまいました。回数でいったら『パルプ・フィクション』の次くらいに観てると思います。 やっぱり上手い監督の映画の導入部の引き込み方は素晴ら…

トリビュート『つりが好き』河出書房新社

3月になったら釣りに行こうと思います。2月は寒い。2月に釣りに行くのは相当に魚釣りが上手なのか、かなりお好きな方だと思います。わたしは下手が理由で行かないくちです。 趣味で魚釣りをするくせに魚釣りにまつわる文芸作品を全くと言っていいほど読んで…

ジョーダン・ハーパー著『拳銃使いの娘』ハヤカワ・ポケットミステリ

自分が初めて買ったハヤカワ・ポケットミステリはデイヴィッド・ゴードン著『用心棒 』でした。しかも去年の話です。生まれてはじめてハヤカワ・ポケットミステリのこのタイプの本を手にとったのが去年なのです。ものを知らないというのは怖いもので「なんだ…

幸徳秋水 著『帝国主義』岩波文庫

120年前、明治34年(1901年)に海外情勢や世界史に関する豊富な知見を踏まえて、当時の明治政府がしゃかりきになって列強と肩を並べるべく邁進していた軍国主義、帝国主義を分析し批判した秋水の初の著作です。軍国主義、帝国主義の前提となる愛国主義なんても…

デニス・ルヘイン著『ザ・ドロップ』ハヤカワ・ポケットミステリ

ボストンが舞台のクライムノベル。雇われバーテンダーのボブが通りのゴミ箱に捨てられていた仔犬(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)を拾い育て始めたことから、少しずつ人生へのコミットメントを取り戻すが・・・というあらすじ。 野良読書家集団…

小川 糸 著『あつあつを召し上がれ』新潮社

『ライオンのおやつ』『食堂かたつむり』のタイトルだけはなんとなく知っていた小川糸を初めて読みました。食事に関する短編小説集です。 『忘れない味』に収録されていた中島京子『妻が椎茸だったころ』にどハマリしてしまった私は、『こーちゃんのおみそ汁…

平松洋子 編著『忘れない味』講談社

食文化にまつわるエッセイを中心に活躍している平松洋子が編纂したこれまた食にまつわる短編小説及びエッセイ集(益田エミリの漫画もあります)。 『もの食う話』『注文の多い料理小説集』と昨年より飲み食い関連のアンソロジーに当たりが多くて幸せを噛み締…

長浦 京 著『アンダードッグス』KADOKAWA

合わなかったです。残念。半分読んだところで「ピタっ」と進みが止まりました。 アンダードッグス・・・「負け犬」チームの機密情報強奪作戦が中国返還前夜の香港で繰り広げられる。そこへ招集された元農水省官僚の主人公はいかにして作戦を遂行し、生き延び…

平山夢明 著『独白するユニバーサル横メルカトル』光文社

キツい・・・これはキツいけど、噂に違わぬ傑作短篇集でした。 中盤に収録されている『オペラントの肖像』『卵男』はいずれも映画『ブレードランナー』『マイノリティ・レポート』アニメ『サイコパス』などに通じるSFサイコ・サスペンスで、『すまじき熱帯』…

藤井太洋 著『ハロー・ワールド』講談社

日本SF作家クラブ会長の池澤春菜氏がTBSラジオでお薦めしていたのがきっかけで購入したこの小説ですが、その経緯とカバーデザイン、タイトルからてっきりSFだと思っていました。 ・・・いや、SFなんでしょう。SFと呼んで間違い無いとは思うんですが、なんと…