ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

映画『クリーン ある殺し屋の献身(原題:CLEAN)』

映画『クリーン ある殺し屋の献身(原題:CLEAN)』
監督:ポール・ソレット  出演:エイドリアン・ブロディ

 良かった! ハヤカワ・ポケットミステリの味わい爆発のノワール調バイオレンス作品。現実世界の端々にある暴力のトリガーと主人公クリーン(エイドリアン・ブロディ)の殺人行為らしき記憶のフラッシュバックを見せながら、彼のトラウマの謎解きは焦らしに焦らす。街を仕切る親分の、世間知らずのボンボン息子が出所するあたりから一気にキナ臭くなるかと思えば脚本が跳ねるのはそれからずっと後。

 この長過ぎるスローテンポな前半部分がこの作品の賛否を分けるような気がします。

 わたしと言えば・・・最高に楽しめました。とにかく終始泣き顔のエイドリアン・ブロディの演技が好きで好きで、カットも表情の大写しが多いものだからもう悶絶するくらい楽しんでいました。彼を初めて認識したのは『シン・レッド・ライン』でしょうか。好きになったのは『ダージリン急行』です。『戦場のピアニスト』は観ていません。本作では回想シーンでしか笑顔を見せない、本当に痛々しい抜け殻キャラを絶品の演技で魅せてくれました。またいいカラダしてんのよ。



 ストーリーは子育てに失敗した犯罪者同士が父親としての格付けを殺し合いでカタをつけるというものです(乱暴)。

 作品の評価を損なうものではありませんが、私はエイドリアン・ブロディ演じる主人公がその職業と薬物常習と子育てを両立させようとしていた過去にそもそもの欺瞞性があると批判的な目でみました。だからこそ彼の『戦うことで折り合いを付ける』というセリフはわたしの心に響いてきたのだと思います。良い脚本でした。

 映画の作風も『ブルータル・ジャスティス』を想起させるグレン・フレシュラーのお下品食いもんシーンだったり、『キャッシュ・トラック』を反転させたような子ども起点の脚本だったり、『Mr.ノーバディ』『ライリー・ノース』を彷彿させる前準備シーンだったり、目配せ匂わせが盛りだくさんでサービス精神旺盛だと思います。アクションシーンは隘路の上からショットが大好きな『オールド・ボーイ』を明らかに意識していると思われて、ノリノリで楽しめました。



 『モンタナの目撃者』を観たときにも思ったことなのですけども、やっぱり、この一定の品質の娯楽作品を供給してくるアメリカ映画界って凄いと思うのです。

 

「あー、面白かった」

 

 映画の帰り道、それだけで幸せになれますもの。