ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

映画『ベイビーわるきゅーれ2』

 公開直後の3/26に観たのですが、投稿しそびれていました。

 

 端的に結論から申し上げますと、是非劇場で観て頂きたい傑作です。1作目はAmazon Prime ¥400レンタルとU-NEXT配信にありますがいきなり2作目を観てもOKです。

 

 「殺し屋」が元締めの民間組織にマネジメントされて、ごくごく普通の市民的な生活をしている設定の映画です。監督は『ある用務員』で注目を集めた阪元裕吾さんですが、学生時代からずーーーーっと人殺しの映画を撮っているちょっと頭のおかしな職人気質のクリエイターです。

 

 というわけで、この映画も人殺しとアクションシーンがウリの映画なのですが、国産アクション映画の現在地を示す重要な作品と言えるでしょう。

 

 アクションシーケンスにちゃちさや粗末さは一切ありません。だけど派手なCGもワイヤースタントも背伸び感も全く無いのです。

 

 予算規模の大きくない作品らしい、工夫とアイディアと情熱だけが伝わってくる、本当に愛おしい、痛そうで残酷で眼を見張るほど暴力的な映画です。

 

 国産アクションで私の好きな映画を思い出すと『アイアムアヒーロー』や『ザ・ファブル』がありますが、両方とも原作コミック有りの割りと規模の大きな作品です。で、何が引っかかるかというと特殊効果がふんだんに使われているというところなのです。

 

 『ベイビーわるきゅーれ2』でも銃撃シーンで弾丸の曳光をCGで足していますが、それ以外には打たれた人間がワイヤーで飛ばされたり、壁を歩いたりするような特殊効果は採用されていません。生身の人間でやってナンボの香港スタントのようなクラフトマンシップに溢れています。素晴らしいです。この作品のおかげで、韓国産の『オールドボーイ』の雑多なしまりのない多人数の乱闘の迫力や『アジョシ』のリアルなのにエレガントなガンアクションへのコンプレックスが無くなりました。

 

 できるんだ、日本映画でもできるんだ!

 

 と、ここまで書いて、『ベイビーわるきゅーれ 1&2』の私にとっての最大の魅力はアクションシーンにはないと手のひらを返します。

 

 阪元監督は、自分が撮りたいアクション映画におそらくご自身のフェイバリットでかつ矛盾するものをあえて持ち込んで作品をバランスさせる困難さと努力を楽しんでいる様子。映画の方向性が『アウトレイジ』にはならないし、『レオン』のようなロマンス+年齢差のフレイバーを効かせたオーソドックススタイルに落ち着くこともない。

 

 『ベイビーわるきゅーれ 1』で私が感じたのは、わざと善悪の彼岸へたどり着かせない”もたつき感”でした。主人公二人がパンパンパンと人を撃ち殺す、でもカメラが流れるように次のカットに動くことなく死体をフレームの端に転がしておくのです。これが実に気持ち悪い。かといって、殺し屋の彼女らにそれを正当化させるだけの悲壮感ただようバックストーリーなんて用意しない。殺して、転がしておく。「なんなんだ、これは!」劇場で鑑賞がスタートした序盤にショックを受けたのですが、実はそれが「ムサイおっさん=世間という面白くない構図にドロップキックをかます女殺し屋二人の痛快活劇」というモチーフに絶妙にオーバーラップしていくの理解したとき、膝を叩くほど嬉しかったことを記憶しています。既存構造がおもろないんやったらそれ壊すのになんの躊躇がいる?と言わんばかり。

 

 そして『2』では会話劇と笑いの要素が前作より格段にパワーアップして、アクションと人殺しと実にほんわかした女性の日常というなんとも言えないミスマッチのマッシュアップを試みています。

 

 本作の笑いは『愛なのに』『街の上で』などの国産映画の最先端のレベルにあると言えます。とにかく脚本の精度が高い。アクション映画なのに、実は本作を通して私が一番好きなカットは将棋盤を挟んでアップになる髙石あかりのあの表情です。殴り合いで伊澤彩織の見せ場を最終盤に持ってきながら、女優「髙石あかり」の最高シーンを”演技”でもって中盤に置いてくる。上手いよ、阪本監督!同じ宮崎県出身として応援している髙石あかりの魅力的なシーケンスでした。

 

 殺し屋家業のパートナーであり同居人であるこの二人の会話で、どこにでもいるような人間らしい怠惰さや間抜けさを優しく包摂し、ベテラン渡辺哲のウザ絡みから『花束みたいな恋をした』トークに掘り下げて、強くて美しいシスターフットに昇華させる脚本は1作目から何倍にもレベルアップした非常に満足度の高い映画体験でした。

 

 それと最後に、私は1作目で大好きだった水石亜飛夢の出番が増えていて嬉しかったのですがちょっとインパクトに欠けるな・・・と感じていましたが、イライラしながらフライフィッシングベストの胸元に付けたピニオンリールをシャカシャカ伸ばしたり縮めたりするシーンが好きすぎて、それだけ200点です。