『ジョン・ウィック』
監督: チャド・スタエルスキ
出演:
キアヌ・リーヴス ジョン・ウィック
ミカエル・ニクヴィスト ヴィゴ・タラソフ
アルフィー・アレン ヨセフ・タラソフ
エイドリアンヌ・パリッキ ミズ・パーキンス
ブリジット・モイナハン ヘレン
ディーン・ウィンタース アヴィ
イアン・マクシェーン ウィンストン
ジョン・レグイザモ オーレリオ
ウィレム・デフォー マーカス
久しぶりにガン・アクションで「凄い!」と思う映画を観ました。
私の中でのガン・アクションシーンがダントツに素晴らしかったのは『コラテラル』でした。トム・クルーズ扮する殺し屋ヴィンセントのコンバット・シューティングの演出は素晴らしかった!
腹を狙ってダブルタップ(二連射)。そして動きが止まったところで頭部への射撃。これを実に地味に演技をしているのです。決して二丁拳銃を横手に構えてダンスをしない。まぁ好きですけどね、ジョン・ウー節もwww
『コラテラル』よりもかなり派手になっているし、「弾、当たる気せぇへんわぁ」的な進行ですが、『ジョン・ウィック』のガン・アクションは特筆すべき良さがあります。
それは、「身体性の拡張」。
ガン・アクションを描くときに、映画としてはまず銃器の絵面で見せます。例えば『ダイ・ハード』でそれまで誰も見たことがないグロックという拳銃を悪役に持たせて、もの凄く怖い印象を残しました。Vシネで世良公則が主演していた『クライム・ハンター』はそのダイ・ハードでマクレーン刑事が使っているのと同じイタリア製のベレッタM92Fというオートマチック拳銃を使っているのですが、射撃シーンで薬莢を排出する拳銃上部の窓からの過剰な閃光は面白い演出でした。
すみません、こういう話し出すと止まらなくなるもんで・・・。
次に弾幕。自動小銃の連射シーン。ぱっと思いついたのは『ヒート』でしょうか。そういえばある時期から発砲音のあとにわざとらしく薬莢が地面に当たる「コロンコロン」ていうSEが入るようになりましたね。
弾幕とくれば着弾シーン。印象に残っているのは古いですけど『ガントレット』のバスが蜂の巣になるシーン。演出的にかっこういいなぁっていうのはやっぱり『マトリックス』の柱がぼっこぼっこ壊れるシーンですかね。
そして、銃撃戦のリアルさを追求する映画。前述の『コラテラル』や『RONIN』はすごくよく描けている上に抑制が効いてて大好きです。
ならば『ジョン・ウィック』の「身体性の拡張」ってなんだ?というお話なのですが、キアヌ扮するジョン・ウィックのガン・アクションが非常に格闘技的なのです。
本来、遠くの標的を破壊もしくは殺傷するための銃を、近接戦闘でまるでパンチやキックを繰り出すように扱うのです。
この逆説的な演出。
ジョン・ウィックがいろいろあって現役復帰(笑)するときに出した道具に、いわゆる拳銃と呼ばれる銃しかないのが不思議でした。小型で携行しやすいですが、装弾数に限りがあり、速射性、精度、破壊力に劣ります。
ところが、戦闘シーンやウィリアム・デフォーとの描き分けで、ジョン・ウィックのキャラというか戦闘スタイルが明確になっていくんですよね。
ジョン(キアヌ)は拳銃を使うストライカー(総合格闘技でいうところのパンチや蹴りなどの立ち技を中心に戦うスタイル。対して組みや関節技を中心にするスタイルをグラップリングと言う)なんですね。
遮蔽物をはさんで敵と相対して撃ち合う、ちょっと顔出してバンバン! 打ち返されて引っ込んで弾倉交換(弾込め)なんていうのは一般的な描写ですが、ジョン・ウィックは敵と組み合いながらゼロ距離で発砲します!それも複数人相手に。
映画『アウト・ロー』のトムさんの多人数相手の格闘技シーン(キーシ・ファイティング・メソッドという流派でバットマンでも採用されています)や、韓国版『オールド・ボーイ』の喧嘩シーン、あれを銃撃にしてると考えてみて下さい。むちゃくちゃでしょ?ww
個人的な思い込みが強いかもしれませんけど、この映画のガン・アクションはそれくらい特異なもので、ものすごく良く出来ているなと思います。
ジョン・ウィックもジャック・リーチャーも帰ってくるので愉しみですね。
私は風俗トラブルでこの世を去ったもう一人のジャック(ジョージ・クルーニー『ラストターゲット』)が帰ってこないのが残念で仕方ないですけど。