ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

『地球の音楽』山口裕之 橋本雄一 編、東京外国語大学出版会

たまには文学でもなく、エンターテイメントでもなく、実用書でもなく、こういう純然たる教養書を読むのもいいものです。

・・・東京外国語大学の世界各地・各ジャンルの50名の専門家・研究者らが奏でる珠玉の音楽エッセイ集!(帯より)

いやはや、スゴ本でした。音楽エッセイなの各地の文化に触れられているのはもちろんなのですが、風俗、食いもん、歴史や宗教、民族の交流、そして政治や紛争など、非常に多面的な角度から語られており、これが1,980円(税込)で手に入るってどうかしてるぜ!と思いますよ。

差別や暴力や政治について暗く辛いところもフラットに書かれていて、読書を通じたダークツーリズムの側面も有りとても価値のある書籍だと思います。

音楽がお好きな方、海外旅行がお好きな方、トイレで読める短いエッセイが欲しい方(各国6ページくらいでまとめてあるので、トイレの時間にうってつけ)におすすめです。


【目 次】---------------------------------------------------

 prologue 橋本雄一

Ⅰ 東南アジア・オセアニア
 インドネシア 世界につながったガムランの響き  青山 亨
 フィリピン フィリピン音楽の変遷  山本恭裕
 べトナム いにしえから現代へ  野平宗弘
 カンボジア 革命の歌 カエプ・ソクンティアロアト
 ラオス  ケーンの響きに導かれて  菊池陽子
 マレーシア 多民族社会の芸能と音楽  戸加里康子
 タイ その存在は音楽に救われている「忘れられそうな他者」
 コースィット・ティップティエンポン
 ミャンマー 幾重にも織り込まれた歴史  土佐桂子
 オーストラリア 過去と未来を結ぶ音楽  山内由理子
 メラネシア ファスの伝統音楽とポップス  栗田博之
 ポリネシア ダンスとともにある音楽  山本真鳥
 ミクロネシア 身体を楽器にする  紺屋あかり
 コラム ワールドミュージックと東南アジア  平田晶子

Ⅱ 東アジア
 中国 ハルビンのストリートと大河に声を
  ――中国人ハーモニカの“声音”が響く 橋本雄一
 モンゴル 現代に甦る草原の調べ 山田洋平・髙橋 梢
 日本 日本の門付け芸・放浪芸  友常勉
 朝鮮半島/韓国 アリランからK-POPまで  金 富子
 台湾  ダイバーシティからコラージュ音楽へ  谷口龍子
 コラム  香港カントポップの歴史と現在
  ――鏡としてのポピュラー音楽  小栗宏太

Ⅲ 南アジア・中央アジア西アジア・アフリカ
 ベンガル 歌こそすべて 丹羽京子
 インド 寂静という音楽 
  ――古典に聴く  水野善文
 パキスタン 南アジアとイスラームの文化的融合  萩田 博
 ウズベキスタン ブハラ・ユダヤ人の音楽文化  島田志津夫
 イラン 自由を希求する音楽  佐々木あや乃
 トルコ 境域を超えて広がる音楽  林佳世子
 エジプト コプト正教会典礼音楽  三代川寛子
 セネガルコンゴ アフリカ音楽によせて  真島一郎
 ボツワナ カラハリ狩猟採集民グイ人の歌 松平勇二・中川裕
 コラム イスラムのなかの音楽  八木久美子

Ⅳ 東ヨーロッパ・中央ヨーロッパ
 ロシア ソ連時代の吟遊詩人―詩と音楽の出会い 沼野恭子
 ウクライナ 音が弾んではしゃぎ出す
  ――ウクライナの音楽文化  前田和泉
 チェコ  「ヴルタヴァ」の聴き方       篠原琢
 ポーランド ロック歌詞と検閲  森田耕司
 ルーマニア 大自然と文化の交差が生んだ音楽  曽我大介
 オーストリア 多様な民族の文化が織り上げた
        ウィーン・オーストリアの音楽  曽我大介
 ドイツ 「ドイツ音楽」の呪縛?  山口裕之・西岡あかね
 コラム ユダヤ音楽――多様な音楽文化の交差点  丸山空大

Ⅴ 西ヨーロッパ・南ヨーロッパ
 イギリス グローバルとローカルの音楽 フィリップ・シートン
 フランス ルグランは「雨傘」と「はなればなれに」
       なっても  荒原邦博
 イタリア 様々な地域から聞こえるラップの響き 小久保真理江
 スペイン フラメンコは変化し続ける  川上茂信
 ポルトガル どこまでも過去に向かう現在  黒澤直俊
 コラム ビートルズとデニムジーンズ 福嶋伸洋

南北アメリカ
 ブラジル “ブラジル音楽”の黎明
  ――ヨーロッパとブラジルの狭間で  武田千
 キューバ 文学から聞こえてくるソン  久野量一
 カリブ海地域 マルティニックから谺するカオスの音声
  ──ジャック・クルシルへの手紙 今福龍太
 アメリカ合衆国 ジャズ編 「ジャズ」の現在
  ――映像資料と文献を通して  加藤雄二
 アメリカ合衆国 ロック編 ロックの歴史
  またはパンデミックしたウィルスについての記憶 沖内辰郎
 コラム 地球の音楽 
                     音楽の源には吟遊詩人たちがいる  今福龍太

 epilogue 山口裕之