ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

映画『愛なのに』城定秀夫監督

監督:    城定秀夫
脚本:    今泉力哉、城定秀夫
出演:    瀬戸康史さとうほなみ河合優実、中島歩、向里祐香、丈太郎

 

 1週間前の日曜日、城定秀夫監督『愛なのに』を新宿武蔵野館で観てきました。素敵な劇場でした。


 『街の上で』で大ファンになった今泉力哉さんが脚本で参加しているプロジェクトという事で観に行ったのですが、じゃどうして今泉監督『猫は逃げた』じゃなくてこちらを観たのかというと、純粋にピンク映画のキャリヤを積んできた城定監督の演出する「成人映画ではない商業作品における正しい(はずの)エロと不貞と未成年との恋愛」に興味があったのです。


 正直、昨今の映画業界のパワハラ、セクハラの騒動に神経が消耗しているところがあって、じゃあ「癒されるエロ」があってもいいし、『愛なのに』はそうらしいと聞きつけて。


 ここ数年で私が観た映画の中ではダントツにベットシーンが多くて、下ネタの笑いが満載。東映の配給っていう安心感も大きかったですね。面白かったです。あえてギリギリのところで脚本を書いた制作意図は伝わってくるし、それだけに全方位に意識を張り巡らせた微塵の雑さも感じさせない作り方は物凄く好感度の高い出来上がりでした。事故的な暴力、不貞、性生活への満足/不満足、未成年との恋愛、教会での姦淫の告白!等々、わりと炎上しやすい素材を扱っているのですが、優しいんですよ、全てが。


 とにかくですね、主人公の瀬戸康史が片想いする元バイト同僚さとうほなみのフィアンセ役中島歩が最高なんですよ。自分のことモテると思ってきただらしない不貞男!「こんな息の抜けた締まりのない発声する男いるわ〜」なんつって小馬鹿にして観てたら、「あー、自分もこんな言い訳してそう」とか「あー、こんなトーンで謝りがち・・・」とか、憎まれ役のクソ男の形態模写がだんだん人ごとに思えなくなってきて、ラスト付近で向理祐香演じる浮気相手が彼に「不都合な事実」を突きつけるクライマックスシーンでは「頼む!それ以上俺のことを責めないでくれ!!」と泣き笑いで胸を掻きむしってしまう・・・。いや、ホンマに笑いましたー。

 瀬戸康史さとうほなみ河合優実も良かったですけど、向理祐香の飄々としていて毒っ気たっぷりながら憎めない演技が最高です。わたしは彼女のセリフがトリガーになる笑いが1番楽しめました。もちろん中島歩の受けが上手いんですけどね〜。

 『愛の渦』もすごく良かったけど、あれを劇場でみんなと観てたらどんな感じだったかしら?エロネタでゲラゲラみんなで笑う不謹慎の共有。やっぱり映画館って楽しい。


 『バッファロー'66』の名シーンを彷彿させるベットを上から撮るほんわかシーンや、それを逆転させてセックスの観念が転換したことを示唆するカットだったり、『ちょっと思い出しただけ』のような公園の定点観察やカットの切り替わりで不思議なパンをし始めるカメラワーク、もちろん『街の上で』を意識させる店舗の奥のレジカウンターの店主を撮る構図・・・などなど、いちいちニヤニヤしちゃう仕掛けも満載。


 いやー、満足度の高い良い映画でした!