ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

『THE BATMAN』マット・リーヴス監督

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監督・脚本・製作 マット・リーヴス

出演  ロバート・パティンソン    ブルース・ウェインバットマン
    ゾーイ・クラヴィッツ     キャットウーマン
    ポール・ダノ            リドラー
    ジェフリー・ライト      ジェームズ・ゴードン
    ジョン・タートゥーロ     カーマイン・ファルコーネ
    ピーター・サースガード    ギル・コルソン
    アンディ・サーキス      アルフレッド・ペニーワース
    コリン・ファレル       ペンギン

 

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 『ライトハウス』でヒゲをたくわえてあんだけおっさん臭かったロバート・パティンソンがなんとも病的でゴスネクラ厨二病ブルース・ウェイン像を作り上げていて素晴らしい!歴代で一番好きなブルース・ウェインになりました。

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 リドラー役のポール・ダノは『プリズナーズ』のまんまだし、気味の悪さも『プリズナーズ』のときのほうが際立っていたけども、その借景も踏まえて大成功の起用だと思います。

 

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 ペンギン役のコリン・ファレルは本人の原型を留めていないですけど、このバージョンのシリーズ化でもっと観ていたいキャラ造形でした。達者やなぁ・・・。

 

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 ファルコーネ役のジョン・タートゥーロが憎々しい最高の敵役やってるんですよね。『カリートの道』に出てきてもぜんぜんおかしくないとても実存的なギャングスタやしきたかじんみたいなルックスでタートゥーロのクセが目立たないんですけど、ゴッサム・シティという「街が構造的に生み出した悪」を上手く表現していると思います。

 

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 キャット・ウーマンを演じているゾーイ・クラヴィッツは良いですね!格闘技も決まっていたし、ウィッグ姿はナタリー・ポートマンを彷彿させる可憐さ。なにせキャット・ウーマンのコスチュームが本作のコンセプト通り取ってつけた感のない「実際にありそう」風なのが格好良かったです。アン・ハサウェイのよりずっと好きですね。ただ・・・ブルース・ウェインのビジュアルに引っ張られ過ぎかもしれませんが、『ドラゴン・タトゥーの女』のルーニー・マーラには勝てないかな?私がマーラ版リスベットが好き過ぎるんですけどね。

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 私が本作で一番好きだったのは『BELLFLOWER』のビジュアルを彷彿させるバットモービルのカーアクションでした。格好良かったなぁ! 多少ジョン・ウィックのフォード・マスタング偏愛に寄せている風が感じられましたが、カメラカットのあとに少し照明の抑えめな先に浮かび上がる車体は静謐さと獰猛さが両立していてめちゃくちゃ格好いい絵でした。


 それに、バットマン史上最高にクールな着地シーンがあります。あれは声出ましたね。「おわぁ!!」って。

 


【ここからネガティブコメント・ネタバレあり】


 なんだこりゃ?ここまでやってて大失敗じゃないですかこの映画!!!!!!!!
 役者にこんだけパフォーマンスさせて脚本と演出で致命的な失敗をしていると断じざるを得ません。

 ノワールやりたかったの? ミステリやりたかったの? 

 いやいや・・・マット・リーヴス監督、あなたそのジャンルそんなに得意じゃないでしょ?

 するすると見つかるバットマン宛のリドラーからの手紙、一問一答でバットマンが答える謎解き、現場保全の警備をしている警官のポロリでがぜん謎解きされる絨毯のネタ。突然謎解きを始めたかと思うと写真を床に並べて何故か缶スプレーで自宅の床に文字を書き出すブルース・ウェイン。キーアイテムから引っ剥がされたその下に観光案内かのように記されたゴッサム・シティの地図に丁寧に仕込まれた光る爆薬の設置場所・・・。

 尺取って客を冷やしているとしか思えない。ゾディアックへのオマージュがどうだとかはおいておいて、あざとさにさえたどり着けない白々しさ。3時間かけてなにやってんの? 謎解きやりたかったらファルコーネとウェインの父親の『LAコンフィデンシャル』パートはごっそり削るべきだった。

 もうひとつ無駄だと思えるキャット・ウーマンとのロマンスパート。なぜかバットマンとキャット・ウーマンが二人きりでビルの屋上に立つと音楽の当て方が野暮ったくなり、気恥ずかしささえ感じさせる台詞と演出がスタート。ラストのバイク・ランデヴーのシーケンスも「あー、はいはい」と吐き捨てたくなる凡庸さ。いやいや、セットにまたがってるのが丸わかりなバットマンの顔のアップで今更何を思えばよいの?監督の不得意カテゴリーが丸わかりな印象的なシーン達だったと思います。細かいことを言うとキャット・ウーマンが自宅の猫をバイクの後ろのパニエケースに積んで走り出すところはただの動物虐待にしか思えなくて映画に入っていけないというか、ラストもラストにシーンなので気持ちが離れていって仕方がないんです。多頭飼いだったのにその時は一頭しか出てこないのが気になるし・・・。

 そして決定的にこの映画の設計がミスってる(もしくは無視している)ところが、バットマンの文法破りのいくつかでした。

 まず、バットマンが明るい日中に人命救助に尽力するその違和感・・・。まぁいいです、型は破らなきゃ新しいものは生まれません。

 でもね、冒頭からブルース・ウェインは例の空にライトで浮かび上がるバットマン・マークで呼び出されるんですよ。ところがゴードン警部補とのパートナーシップが作られるのは中盤にかけて?まぁこの作品の前提として警察のだれかと協力体制ができていたとしましょう。それなのに、街中のクラブの用心棒にはすぐに顔バレするくらい有名なブルース・ウェインの名を、勾留所の監視カメラの下で(カメラをアップで抜いたんでそこは強調しているはず)バットマン・コスチュームで面会に訪れた彼にリドラーは「ブルース・ウェイン」と何回も呼びかけるんです。バレますよ!、バラしますよ!って。

 それがクライマックスの人命救助のシーンで「覆面の男が、懸命に!・・・」ってテレビ中継されています。そいつがブルース・ウェインどころか、バットマンであることも周知されていない世界が立ち上がるわけですよ。

 は!?

 ヒーローのヒロイックさと匿名性のロマンを、そんな形で台無しにしてまで表現したかったのは、絨毯剥がした床に刻まれたゴッサムシティの地図の外縁にチカチカ光るLEDですか?

 げんなりですよ。