ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

平山夢明 著『独白するユニバーサル横メルカトル』光文社

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  キツい・・・これはキツいけど、噂に違わぬ傑作短篇集でした。

 

 中盤に収録されている『オペラントの肖像』『卵男』はいずれも映画『ブレードランナー』『マイノリティ・レポート』アニメ『サイコパス』などに通じるSFサイコ・サスペンスで、『すまじき熱帯』はまんま『地獄の黙示録』を借景したブラック(ユーモア?)スプラッタ作品。内容のエグさに反比例する喉越しの良さと痛快さがある不思議な作風です。
 『セブン』、そしてなぜか映画版『オールド・ボーイ』の風味が鼻の奥にツンと来る『Ωの聖餐』は紛れもない傑作です。本書のナンバー1でした。
 ジャブにちんこネタ突っ込んでくる光文社の神経もどうかしている巻頭の『C10H14N2(ニコチン)と少年』は、読み口の不快感を説明するのにどうしようもなく自分の青臭さと向き合わないといけない置きどころに困る一編でした。
 ぶっ飛んだ設定が神がかってる表題作の『独白するユニバーサル横メルカトル』。これは凄い。変態作家の面目躍如。誰が書けるよ、この設定・・・。
 読んでる間に2~3回失神しかけた『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』。これは名作長編『DINER』へと続く重要作です。
 そして残るは『無垢の祈り』・・・実は本作を手にとったのはこの短編が映像化されていると知ったからなのですが、先に原作を読んで、【絶対に実写版は観ない】と心に決めました。

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読み終えてから2週間弱してようやく感想をかける壮絶読書体験でした。