ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

高橋ユキ 著『つけびの村』(晶文社)

TBSラジオ製作のオーディオムービー『つけびの村』の原作がノンフィクションと知って読んでみました。 2013年7月21日、山口県周南市の山間にある限界集落で保見光成(事件当時63歳)が起こした、集落住民12人のうち5人が殺害された連続放火殺人事件を扱って…

長谷部恭男『憲法とは何か』岩波新書

もともと改憲護憲に問題意識があって手にとったわけではなく、加藤陽子東大教授の『それでも、日本人は戦争を選んだ』(新潮文庫)に「長谷部先生は、この本のなかで、ルソーの「戦争及び戦争状態論」という論文に注目して、こういっています。戦争は国家と…

新装版『もの食う話』 (文春文庫)

新品で¥616ですよ。お値打ちですよ。鼻血出ますよ。 食に関する短編を収録した絶品アンソロジー。目次を開くとレストランにあるようなメニューの表紙を模したデザイン、「厨房から」に始まり「食前酒」「前菜」「主菜」「サラダ」「デザート」「食後酒」と…

原宏一『ヤッさん』(双葉文庫)

原宏一『ヤッさん』(双葉文庫)を読みました。なんで買ったのかはよく覚えていません。今月はスーザン・ストレンジ『カジノ資本主義』がなかなか進まなくて冊数が伸びていないので浮気です。速い人なら半日くらいで読めるボリュームです。私は遅いので3日ほ…

エレイン・シャノン著『クリミナル・イノベーション』ハーバーコリンズ・ジャパン

ノンフィクションです。凄本です。 映画『ボーダーライン 1・2』『悪の法則』『トラフィック』、小説『犬の力』(未読)なんかが好きな人は鼻血垂らしながら楽しめると思います。サイコパス天才ハッカーがその暗い生い立ちからどんなダークサイドスキルを身…

山口謡司 著『文豪たちの美味しいことば』

私の本選びは「読まないジャンルがいくつかある」くらいでとても無節操だと思います。読まないジャンルと言えば・・・官能小説、パズラー小説を始めとする本格ミステリ、ラノベ、幻冬舎、芸能人エッセイ、〇〇が8割言い切り自己啓発本、俺みたいに突き抜けて…

ジェイソン・レナルズ『エレベーター』早川書房

『ベルリンは晴れているか』で大ファンになった深緑野分氏が推薦ということで全くの前知識無しに購入して読んでみました。てっきりクライムノベルかハードボイルドかと思っていましたが(おそらく翻訳の青木千鶴氏が『用心棒』も担当していたからそのイメー…

アーノルド・J・トインビー 著『試練に立つ文明(全)』現代教養文庫

国際競技大会の一連の報道を見るにつけ、いよいよ日本は衰退国家だという実感は増すばかりです。ふと思い出して、久しぶりに中西輝政『なぜ国家は衰亡するのか(PHP新書)』を読み返してみました。 中西によれば国家なんて上がったり下がったりを繰り返すも…

『中小企業の人材開発』中原淳・保田江美 著

今朝は、なんで3千4百円も出してこれを買ったのか自分でも理由が分からない本を読んでいました。 『中小企業の人材開発』中原淳・保田江美 著、東京大学出版会 完全に学術研究書でした。 だけどもハウツー本という名を借りた自分語りを読まされるより、研究…

モリー・グプティル・マニング著『戦地の図書館 海を超えた一億4千万冊』

『戦地の図書館 海を超えた一億4千万冊』 モリー・グプティル・マニング著、創元ライブラリ これは面白い! 歴史、文学、文化、米国風俗史の勉強になるし、なにせエキサイティングで泣ける! 本の帯にはこういう紹介文があります。「戦地の兵士に本を送れー…

C.J.チューダー著『アニーはどこにいった』文藝春秋

傑作ですね。評判通り。 たっぷり怖いです。腐臭もカビ臭さも不穏さもムシのガサガサ感もしっかり味わえます。イギリスの田舎が舞台ですので、ゴシックとまではいかないですけど現代のやさぐれ感のバックキャストに土地の呪いが浮かび上がる語り口は上手い。…

王谷晶 著『ババヤガの夜』河出書房新社

ノリにノリまくっている河出書房から2020年にリリースされたアクションバイオレンスものです。平山夢明『ダイナー』以降、ぶっ飛びバイオレンスの中毒症状が続いていて、ライアン・ギャティス『血まみれ鉄拳ハイスクール』があんまり面白くなかったので中毒…

『藤十郎の恋』菊池寛

【リアリティーショウ】 世にある、人の惚れた腫れたをネタにするリアリティーショウというのが好きではない。どちらかというとお金を払って芸事を楽しむということには積極的なの方だと自覚しているけど、地上波でセミプロ同志がじゃれ合ってる様子を楽しむ…

ライアン・ギャティス『 血まみれ鉄拳ハイスクール』文藝春秋

文藝春秋がけっこう満を持して翻訳版を出してきたので買って読んでみたのですが、あんまり乗り切れなかったなぁ。この手のジャンルは翻訳者の文体で好き嫌いがずいぶんと変わるってことかな。全然リズムが合わないし、読み返しても登場人物達の体の使い方が…

長沼伸一郎『現代経済学の直観的方法』講談社

スゴ本でした。これはお勧めします。大人の教養本。 極論したら経済学の本なんてこれ一冊でいいです。体系的、かつ網羅的。経済学どころか歴史、宗教、地政学、哲学、テクノロジー、政治までパッケージされてます。 理系畑の著者が、理系研究者が世の中で冷…

読書感想『読書について 他二篇』ショウペンハウエル著、岩波新書

『読書について 他二篇』ショウペンハウエル著、岩波新書 著者は1800年代中盤に活躍したドイツ人の哲学者。ニーチェに影響を与え、そしてそのニーチェと相互に刺激しあったと言われている文豪がドストエフスキー。そんな世代の人の書いたもの。内容を簡単に…

読書感想『それからはスープのことばかり考えて暮らした』吉田 篤弘

優しくて可愛らしい手触りの話だ。 全体的に毒気がほとんど感じられないファンタジーのような東京下町の人情話。同じような料理の温かさ、同じような人情味がトッピングされても江國香織だともうすこし愛憎というかスパイスが強くなると思う。 この本に出て…

ゆるく生きるために熱く戦う---寛容と強さ

本を読みながら、引いてある文献に安い中古が有ればどれこれ構わずオンラインで買ってしまうので、週に数冊の本が届きます。 最近、写真にある本が届きました。だけども、森嶋通夫さんのことは知らないし、何が気になって買ったのかも思い出せない。ただ、最…

『幻想の経済成長』デイヴィッド ピリング

読むのにとっても時間がかかった。理由は、この本は学術書や実用書の類ではなく、「面白いノンフィクション、ルポタージュ」の体裁だから。 いつものようにビジネス書を読んでいる時ならば、マーカーと付箋を片手に「読み返した時に拾うところ」を残していく…

『DINER』平山夢明

昔、ノーパンしゃぶしゃぶというのが流行ったと聞く。自分には絶対に楽しめない業態だ。なぜなら僕には食欲と性欲を一緒に満たすことは出来ないから。それら欲求の対象が同時に目の前に並んでいれば、先に気持ちの悪さを感じるだろう。仕方がない、そういう…

二周遅れの「働き方改革」

このあいだ部下が嘆いていた。「なんであいつら(職場の役職者のおっさん達)、業務の打合せをスケジュール設定無しに終わらせんスか!?」彼からすると、なんだか自分がやらないといけない仕事が匂うのに、タスキングをするための要素が足りなさ過ぎて気持…

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』ヤニス・バルファキス 読書感想

ギリシャ金融危機の際にギリシャの財務大臣を務めてた経済学者が書いた本。 たしかに面白かった! 『信用の新世紀』『日本が売られる』『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼 』『進歩: 人類の未来が明るい10の理由』なんかに書かれている事がこの本でギュッと結…

『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』ハンス・ロスリング 他

ジャック・アタリの『危機とサバイバル』、堤未果の『日本が売られる』、森永卓郎の『なぜ日本だけが成長できないのか 』などを読んでいると、どうしても世界や未来に対して悲観的になってしまうので、この本を手にとってみた。 世界各国の人々の所得、健康…

日本人の原罪

事実や数字をかくも軽んじる日本人の価値観の上位にあるもの。日本人の反省と学習と成長を阻んでいる " it "って何なんだろう。 数も数えられない役所に自分や家族の財産や生命を喜んで預けたがるほど、僕はマゾヒスティックな人間ではない。 政権交代にもつ…

斉藤賢爾 著『信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来 』

斉藤賢爾 著『信用の新世紀 ブロックチェーン後の未来 』インプレスR&D 年始早々、スゴ本に出会いました。 若者的に言うと、「この本、ヤバイ」。 ビットコインにまつわるコンピュータ科学の技術論が中心ですが、「信用の新世紀」のテーマが鼻血ものに刺激的…

『白痴』坂口安吾

作中では井沢が白痴の女性と性交渉していたかっていうのは明らかには書かれていないけど、おそらく肉体関係はあったんだろう。でも私には白痴の女性と性交渉を持つという変態性は、この作品においてそれほど重要ではないように読めた。 職場や文化的な空気や…

本 『殺戮にいたる病』『絶叫』『その女アレックス』

昨日、『殺戮にいたる病』を読了しました。 伝説のラストシーンとやらを体験。 叙述トリックを使った「本格」なんだそうです。・・・正直言うと、本は一回読んだだけで楽しめないとしんどい私には「本格ミステリー」は向いていないですね。 同じくらい気持ち…

土漠の花

『土漠の花』(月村了衛著/幻冬舎刊) あらすじプロモーションビデオ - YouTube先ほど新幹線の車内で読み終わって、号泣して、隣のビジネフマンに引かれました。「クライマーズ・ハイ」くらい泣いたかな。・・・自衛隊がソマリアでの活動中に戦闘に巻き込ま…

我々日本人にも、「戦争」の覚悟は不要とは言えない。『悪童日記』アゴタ・クリストフ

今、このタイミングでこの小説に出会えたことに感謝しています。「その女アレックス」談義の時に同僚に勧められてイッキ読み。「スゴ本」でした。 戦争に反対することと、戦火を逃れる備えをすることは、同時にやっていてもおかしいことではないと思います。…

その女アレックス (文春文庫)

「スゴ本」でした。 久しぶりに「凄い読書体験をした!」って感じです。 暴力描写と性的な設定が女性には少々酷な話ではありますが、間違い無くお勧めですね。 精緻さとダイナミックさ、残酷さとヒューマニズムが絶妙に両立している素晴らしい小説。 アレッ…