ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

新装版『もの食う話』 (文春文庫)

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新品で¥616ですよ。お値打ちですよ。鼻血出ますよ。
食に関する短編を収録した絶品アンソロジー。目次を開くとレストランにあるようなメニューの表紙を模したデザイン、「厨房から」に始まり「食前酒」「前菜」「主菜」「サラダ」「デザート」「食後酒」と章立ててあって、それぞれに合った個性豊かな作風の短編が収められています。エッセイから日記、小説に詩に漫画。美食、うんちく、風刺からミステリ風、奇譚、SF、エログロまで。
これはたまらんかったです。
『喰いたい放題』が好きな色川武大の「大食いでなければ」、『酒・肴・酒』を所蔵していることが自慢の吉田健一の「饗宴」も良いですけど、ダントツに好きな収録作品は武田泰淳「もの食う女」でした。
青い、青臭いよ! 終戦から3年後の昭和23年(1948年)に正反対のタイプの二人の女性と交際し、ぷらぷらと洋食屋で食事をして酒を飲んで、触るやら触らんやら事に及ぶやら及ばんやらをくどくどくどくど・・・と書いてある。この「中二病でも恋がしたい」感!それぞれの女性の性格と主人公との相性が、食べ方やデートのときの態度を軸に語られる。
一切賛成できないけどびんびん共感しちゃう「俺はきっともっとモテるはずだ」と自分に呪いをかけちゃったダメ男の話。面白いなぁ。
あとはイロモノ寄りの大岡昇平澁澤龍彦赤瀬川原平筒井康隆はさすがのインパクトでした。
そして吉行淳之介「出口」はなぜか映画『オールド・ボーイ』『新しき世界』なんかを彷彿させる絶品の味わいでしたね。好きだなぁこれも。
<収録作品>
堀口大學シャンパンの泡」 大岡昇平「食慾について」 内田百閒「餓鬼道肴蔬目録」「百鬼園日暦」 大手拓次「洋装した十六の娘」 夢野久作「一ぷく三杯」 永井荷風「妾宅」(抄) 邱永漢「食在廣州 食は広州に在り」 澁澤龍彦「グリモの午餐会」 椎名麟三「松茸めし」 長谷川伸「鼻くそ」萩原朔太郎「雲雀料理」 武田泰淳「もの食う女」 武田百合子枇杷色川武大「大喰いでなければ」 赤瀬川原平「食い地獄」 吉行淳之介「出口」 森鷗外「牛鍋」 岡本かの子「家霊」 筒井康隆「人喰人種」 吉田健一「饗宴」 山村暮鳥「あさがお」 永井龍男「黒い御飯」 小泉八雲「食人鬼」 古川緑波「悲食記」(抄) 森田たま「酢のはなし」 西条八十「お菓子の汽車」 森茉莉「ビスケット」 近藤紘一「夫婦そろって動物好き」(抄) 水木しげる悪魔くん」(抄)向田邦子「お八つの時間」 直木三十五「果物地獄」 吉田一穂「VENDANGE」 中島敦「幸福」 福田恆存「ニュー・ヨークの焼豆腐」