私の本選びは「読まないジャンルがいくつかある」くらいでとても無節操だと思います。読まないジャンルと言えば・・・官能小説、パズラー小説を始めとする本格ミステリ、ラノベ、幻冬舎、芸能人エッセイ、〇〇が8割言い切り自己啓発本、俺みたいに突き抜けてみろ自己啓発本あたりでしょうか。そんなジャンルにも良い本もたくさんあるとは思うのですが、なかなか手に取ることはありません。
話は戻って、その他の無節操読書ジャンルの中でも、とりわけ食に関する小説、エッセイや書評は一貫して読んでいるなと思います。
おそらく自分が飲み食いが好きだということ以上に、叔父の影響が大きいです。小中学校の頃に入り浸っていた彼の家の本棚にあったロアルド・ダール『あなたに似た人』収録の「味」「おとなしい凶器」や大沢 在昌『一年分、冷えている』、森 瑶子『少し酔って』なんかにはとても影響を受けたようで、譲り受けた国木田独歩『牛肉と馬鈴薯』、吉田 健一『酒肴酒』なんかはすっかり日焼けしていますがたまに読み返しています。
そんなわけで月に1~2冊はこのジャンルの本を買うのですが、今月は山口謡司 著『文豪たちの美味しいことば』にしました。
平野紗季子『味な店』、都築響一『Neverland Diner』、稲田俊輔『おいしいもので できている』などなど注目新刊が目白押しなのですが、帰りの電車で読む本が無くなった日に立ち寄った本屋で在庫していたのがこちらだったということで。
半日くらいで読めるボリュームです。良いですね。扱う作家は和泉式部から中沢けいまで縦横無尽です。そして文藝春秋のモンスタートリビュート『もの食う話』によく似た第一章 ごはん・麺・肉料理、第二章 海の幸、第三章 一品おかず、第四章 デザート・おやつ、という章立てで構成されています。きっと意識はしているでしょうね。
なにが良いかって、タイトルから想像する文章術だけにとどまらず関連作品の紹介、当時の食文化のうんちく、作家の人物評などいろいろな切り口で語られていることです。一冊読むと5冊くらい買ってるパターン。
面白かったです。新刊で税抜1,300円。今はこんなご時世ですけど出張移動なんかには缶ビールのお供に最高ですよ。
<目 次>
◆第一章 ごはん・麺・肉料理
ツグミの粕漬け…夏目漱石
むぎわら鮨…佐藤春夫
餅…三好京三
焼きおむすび…吉村昭
チャンポン…小堺昭三
かんぴょうののり巻…柳屋小さん
スープ…太宰治
明治時代の肉料理…徳富蘇峰ほか
◆第二章 海の幸
アンコウのドブ煮×坂口安吾
鰹…国木田独歩
白魚…小泉八雲
イワシ…和泉式部
ニシン…三浦哲郎
鯛…竹西寛子
イトヨリ…坂村真民
ホッケ…小檜山博
ハタハタ…太宰治・檀一雄
くじら…中沢けい
初鰹…山口素堂
蟹…結城信一
ハマグリ…海老沢泰久
◆第三章 一品おかず
梅干し…正岡子規
すむづかり…谷崎潤一郎
沢庵…田山花袋
菊…幸田露伴
納豆…鹿島孝二
おから…内田百閒
蒲鉾…宇野浩二
湯豆腐…鈴木三重吉
里芋の煮ころがし…小池真理子
みょうが…水上勉
風呂吹き大根…獅子文六
芝エビのサラダ…檀一雄
◆第四章 デザート・おやつ
ざくろ…川端康成
メロン…中谷宇吉郎
白桃…杉浦明平
焼き芋…二葉亭四迷
月餅…楊萬理
白玉…永井荷風