文藝春秋がけっこう満を持して翻訳版を出してきたので買って読んでみたのですが、あんまり乗り切れなかったなぁ。この手のジャンルは翻訳者の文体で好き嫌いがずいぶんと変わるってことかな。全然リズムが合わないし、読み返しても登場人物達の体の使い方が追い切れない描写ばかり。
アクション描写は平山夢明『ダイナー』の方が上。建造物内での群衆スペクタクルは呉勝浩『スワン』の方が上。日本人作家、すげぇな。再認識した。
この作品で着目すべきは、最終的に勝ったのか負けたのかはさておき、社会階層、職業、人種、貧困、性あらゆる差別と抑圧への抗いの描かれ方だった。その差別は本作のテーマとして「暴力」に表出しているのだけど、結局は「無理ゲーをやらざるを得ない現代の若者のサバイバル」に収束するメッセージなんだろうと読んだ。
そこの筋だけはすごく良かったな。