王谷晶 著『ババヤガの夜』河出書房新社
ノリにノリまくっている河出書房から2020年にリリースされたアクションバイオレンスものです。平山夢明『ダイナー』以降、ぶっ飛びバイオレンスの中毒症状が続いていて、ライアン・ギャティス『血まみれ鉄拳ハイスクール』があんまり面白くなかったので中毒症状に手が震えていたところに手にとった小説でした。
書店で買ってから止まらなかったですよ!一気読みで読了。
アクションはもちろんよく描けていますし、ストーリー運びのテンポも密度もハイレベルです。守られるヤクザの組長の娘と主人公の格闘家女子の関係性が瑞々しくてソウルフル。周りの下衆男達との対比で生き抜く魂の美しさが際立ってとても清々しい読書感でした。
特にお勧めしたい理由が、マッチョな主人公が女性性を全く武器にも不利な材料にもしないことと、彼女が守るべき組長の娘との関係が恋愛関係や肉体関係には至らないところです(少なくともそういった描写は避けられています)。
これって、男性が理解しやすいヒロイズムやロマンスの典型にはめ込んで物語を進めることに真っ向から抵抗しているのですよね。強い女性、ヒロイックな女性、女性間の関係性を男性好みの典型に落とし込まない。無用なエロを絡ませてくる菊池秀行や夢枕獏なんかの国産バイオレンスより私は断然こちらが好みですね。
見事だと思います。
そしてそして、二段階ロケットかよ!のストーリー展開は完全に予想外でした。口、開きっぱなしになりましたよ。豪速球でそんなコースに投げられたら・・・すんげー面白かったし、泣いてしまいました。
僕の2020年小説のナンバー1でした。