【監督】アントン・コービン
【原作】ローワン・ジョフィ『暗闇の蝶』
【脚本】マーティン・ブース
【出演】ジョージ・クルーニー
ヴィオランテ・プラシド
テクラ・リューテン
とても好きな映画であることは間違いないが、不思議な印象の映画。
サスペンスでもクライムムービーでもない。私はハードボイルドと言いたいが。
背景説明をばっさり切り落としてしまった作り方は、なぜだかSF作家J・G バラードの作品を読んでいるような感覚。
殺傷能力を高めるために弾頭に銀を封入したり、車の修理工場に転がってた円筒形のシリンダー部品を重ねてパイプにつめてガス抜けの経路を作ってサプレッサーを自作したり、その部品を受注するやりとりで射程距離と消音効果を天秤にかけたりとか、そんなギミックにのめり込むと思えば、神父の隠し子や娼婦との恋沙汰や、殺し屋家業とは関係ない人間ドラマをちりばめたり。
映画通ぶるつもりは無いけども、自分で自分の作りたい映画を作っている独りよがりなこの作風は大好きだし、成功しているとも思う。
ラストの喪失感は、ジョージ・クルーニーの別の名作、「マイレージ・マイライフ」に通じるところもあり、あの突き放した感覚は癖になる。