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『バイス / VICE』(アメリカ 2018) 映画感想

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監督 :アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベイル ディック・チェイニー
   エイミー・アダムス  リン・チェイニー
   スティーヴ・カレル  ドナルド・ラムズフェルド
   サム・ロックウェル  ジョージ・W・ブッシュ
   タイラー・ペリー   コリン・パウエル
   アリソン・ピル    メアリー・チェイニー
   ジェシー・プレモンス カート

【解 説】

ダークナイト」「アメリカン・ハッスル」のクリスチャン・ベイルジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領(バイス・プレジデント)を務めたディック・チェイニーを演じた実録政治ブラック・コメディ。9.11同時多発テロを受けてイラク戦争へと突入していったブッシュ政権の驚きの内幕を、チェイニーの知られざる実像とともに過激かつ皮肉いっぱいに描き出す。共演はエイミー・アダムススティーヴ・カレルサム・ロックウェル。監督は「俺たちニュースキャスター」「マネー・ショート 華麗なる大逆転」のアダム・マッケイ。
 1960年代半ば。酒癖が悪くしがない電気工に甘んじていた若きチェイニーは、婚約者のリンに叱咤されて政界を目指し、やがて下院議員ドナルド・ラムズフェルドのもとで政治のイロハを学び、次第に頭角を現わしていく。その後、政界の要職を歴任し、ついにジョージ・W・ブッシュ政権で副大統領の地位に就く。するとチェイニーは、それまでは形だけの役職に過ぎなかった副大統領というポストを逆用し、ブッシュを巧みに操り、権力を自らの元に集中させることで、アメリカと世界を思い通りに動かし始めるのだったが…。https://www.allcinema.net/cinema/366360

 

 僕がクリスチャン・ベイルのことを最初に認識したのは『アメリカン・サイコ』を観た時。劇中の役の設定はクソ野郎だけど、あぁ本当にこの青年は美しいな、と思ったことを覚えている。そしてその思いは『ファーナス』を観たときにさらに深まった。演じることへの真摯さが表に溢れてしまって、それが味になっちゃっている実は不器用な俳優だと思う。


 今回は彼がジョージ・W・ブッシュ大統領時代に副大統領を務めたディック・チェイニーを演じている『バイス』を鑑賞した。


 感想を一言で言えば番宣の印象よりも随分とシリアスで辛辣で闇が深い。そして映画として、とてもとても上質。特にあのトリッキーな狂言回しの設定は本当に驚いた。『トルー・グリッド』の狂言回しも印象的だったけど、あれに匹敵するくらい上手い設定。


 配役についても、こんなにすげぇ俳優たちに実在の人物を演じさせているんだから、面白い演技が観られないわけがない。


 主演のクリスチャン・ベイルの演技が驚くほど抑制されている点は改めて素晴らしい。押し感はスティーブ・カレルの方が強いけど、カレル演じるラムズフェルドほど悪辣さを感じさせず幼稚ささえ漂わせる純粋なくらいの権力欲には凄みがある。「権力志向の強い静かな黒子」の恐ろしさを上手に表現している。同じ監督の『マネー・ショート』に続きベイルとともに出演しているスティーブ・カレルがまたいいんだ。「ラムズフェルドってそんなに悪人やったん?」っていうくらいダークなオーラを発してる。サム・ロックウェルも最高。ブッシュJr.って「あぁほんまにアホのお調子モンやってんなぁ・・・」って笑いを通り越して悲しくなるくらいの操り人形感。これが他人事ではない我らが日本の現状を鑑みるに、権力構造に古今東西繰り返されたよくある景色なんだろう。


 素材的にこの作品がアダム・ドライバーの『ザ・レポート』や、『ザ・レポート』でも引用されている『ゼロ・ダークサーティー』につながっていると思うと非常に興味深く鑑賞できた。ライス大統領補佐官が出てくるたびに『The Looming Tower(倒壊する巨塔-アルカイダと「9.11」への道)』でめちゃくちゃ批判的に描かれていたなぁ、と苦笑いが出たりとか。

 そして最後に、権力者が専門知を総動員して「法の解釈」をガバガバにして骨抜きにし、イメージ戦略「言い換え」を駆使する現代的政治の技術は恐ろしい。あの時代、米国は本当に傷んでしまったんだと思う。

 

ザ・レポート (字幕版)

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ゼロ・ダーク・サーティ (字幕版)

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マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)

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