人間、寂しさや孤独感を、透明なうちにもてあぞぶうちは、ある意味で健全で、1人で完結して、次の一歩を踏み出す選択肢を常にもっていると思う。ただし、雑踏の中1人歩いていて、知人と話していて、視界に曇った「膜」のようなものを感じ始めたら、どうやら何らかの変化が必要なタイミングに来ていると思う。
「膜」・・・『ひかりのまち』でナディア(ジナ・マッキー)が涙しながらもたれかかったバスの窓のようなもの・・・「自分」と「世界」を隔てる、薄くてぼんやりとしていて、そのくせどうしようもなくぬぐいきれない断絶感。
肯定的に捉えれば、そうではない人々(意味不明な単語を並べる、まったく価値を置けない人種ではないという意味で)・・・いわゆるSoul Mateと呼ばれるような人々に囲まれてシアワセに笑って過ごせる日々が、自分を高めればそういう日々が来るという。
ただし現実はこの映画のスカーレット・ヨハンソンのように、「確かに自分が持っていた選択肢の中から、納得ずくで選んだ結果」としての"現在"に縛られて、友人とのかみ合わない電話に涙しなければならないようなはめになってしまう。
ソフィア・コッポラにとってはどれだけ思い入れがあろうとも外国である東京、かたやビル・マーレー扮する俳優、ありがちなシチュエーションではないけれども、この映画に関しては、こと「ドラマ」は起きない。
「自閉症的視点」と評された監督の画作りと同様、同じ心象を持たない人間には感情移入しにくいタッチで物語りは進む。白人文化の「あちら側」、異国である日本の「こちら側」のコントラストだけを際立たせながら、ビル・マーレーとスカーレット・ヨハンソンの立ち位置を定めていく。
とにかく2人にはことさら何も起きない。雑踏の中、ビルがタクシーの中からヨハンソンの後姿に気付いて、果たしてそれが本人だとしても、「行って帰ってくる」数日間のうちの、数分間の演出に留めてしまう。
単なるLost'n Translation。
でも確かに2人は変化した。それは映画の中にある特別なドラマではなくて、誰にでも起こしうる、けれどもちょっと難しい軌道の変化。僕らは、たとえ「膜」の中にいようとも、必要とあらば、全ての偶然を味方につけ、そういう変化を起こしていかなければハッピーの自覚を持てない。
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