家族愛や倫理観、行いの善悪を描いた映画ではないと感じた。
恐ろしく深い、人間の因果についての話。
この映画では、神さえもそこに巻き込んで、深く深く織り込んでいく。
「灼熱の魂」では暴力の連鎖に対しての批判的なメッセージは読み取れたが、この作品ではそれもない。
ヒュー・ジャックマン演じる父親が犯罪行為に走ってしまった時点で、刑事役のジェイク・ギレンホールにラストであの視線の演技をさせることで、一切を鑑賞者に放り投げる。
「あなただったらどうしますか?」と。
ヒュー・ジャックマンが娘のために容疑者役のポール・ダノにリンチをしている最中、「彼が真犯人であって欲しい」と願った自分の心象に戦慄した。
とても怖い経験をした。
自分はその時、真実や人一人の命の尊厳よりも、自分の倫理観の範疇で理解できる単純な世界を望んでいたからだ。