- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/05/02
- メディア: Kindle版
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あくまでスライドの作成術であって、プレゼンテーションの解説書ではないことには注意されたい。
『外資系コンサルの』銘打ってあるが、派手さやトリッキーさといった要素は無く、どちらかといえばしっかりとした理論に裏打ちされたミニマリズムといった風情が漂うところに好感度が高い。
実は意外と、パワーポイントなどを使ったスライド作成の基礎の基礎といったところは押さえられていなものだ。学生研究論文や社会人になってからのプレゼンテーション作成においては、厳然としたルールや体系よりもむしろ、色数や手管で勝負に出ている現実は否めない。
そんなぼんやりとした不安にあってこの本を見つけた時、確かに「スライド・チャート作成」にこれほど特化した解説本は見たことが無かったということに気付いた。不勉強を棚にあげて申し上げるが、それだけこの本の存在価値は大きい。
最初に述べた事だが、この本がプレゼンテーションのノウハウ本ではなく、スライド作成術について突き詰めているものというところが非常に重要だと感じられたのである。
図表というのは 単独で数値や図形からメッセージを伝えなければならない。
その背景には我々が持つ課題意識や解法へのメッセージがあるはずだ。
であるならば、我々の持つメッセージの中核を伝えるにあたり、ストーリーテリングやプレゼンテーションの技術以上に『図表』が重要になってくるはずだ。
言葉の次に来るべきもの。
それだけ大事な図表作成の基礎をスキップして、美しいスマートアートだのアニメーションだのにどれだけ我々が拘泥しているか、そしてそれがどれだけの逆効果を生んでいるか。
本書を読むとそれが自覚され、身につまされる。
私は特に
「差」があることに意味が生まれる。だから「インク」の量は情報量に比例する。
一枚のスライドに込める情報は少なければ少ないほど鋭くインパクトの強いものになる。
だからスライド一枚のインクの量をぎりぎりまで減らせ。そして白黒で完結させよ。
という内容に感銘を受けた。
今まで私は如何に本末転倒な仕事をしていたことか・・・。
また、筆者が紹介する「見本とすべき図表」のアイディアとメッセージ性の素晴らしさに、そのサンプルだけでも本一冊の値打ちがあるとも思った。
優れたスライドはかくも饒舌で生き生きとしているのかと。