一言で言えば「SEX」の映画。
かぎかっこつけないで日本語で言うとココロとカラダの映画。
『ハピネス』の毒っ気そのままにセラピー寄りにしたような。
間違いなくいい映画ですが、恋人や家族と一緒に観ると「言いだしっぺ」が今後白い目で見られる可能性があるので気をつけてください。誤解のないように繰り返しますが、鑑賞後の印象はとてもさわやかな良い映画ですよ。
わたしなんかはそんなに突き詰めてこのテーマに関して考えてなかったので、どちらかというとN.Y.の描き方とサロン「ショートバス」に集まる人たちの捉え方に興味が湧きました。
この映画では3Dアニメを使いながらN.Y.を箱庭的に捉えて、メルヘンチックな演出(とても綺麗)で俯瞰するけれども、そこに住む登場人物の一人、SM女王のセヴェリンには「ここでは何をするにもお金がかかりすぎるの」なんて世知辛いことを言わせたり(またそれが、彼女が女王の仮面とって素直な心情を出してる時だからなおさら、ね)して、だからこそ人々がそれぞれの孤独感を持ち寄ってつながりを確かめ合う「ショートバス」という空間にぐっとフォーカスが当たるような構成にしてる。
それは『僕たちのアナ・バナナ』でエドワード・ノートンがセントラルパークのシーンで言ってた「N.Y.に住んでない人間は、人生の幸福の半分を知らない」っていうセリフと正反対のもの。明るいしね、あの映画。
個人的には『ひかりのまち/wonderland』で集合住宅の灯りをロングショットで映す前後にお姉ちゃんのデビーが息子に「帰ってピザトースト食べましょ」って言ってあげたときのその対比に近いような気がした。
ショートバスはもっとずっと騒々しいけど。
タイトルの『ショートバス』というのは、劇中にも言及があったということは肢体不自由な児童のための通学バスにかけて、「何かしら足りないものを持つ者」が集う場所と設定してあるのだろうが、さりとて、それを「マイノリティ」と断じてよいものか。
ドラッククイーンが仕切ってる店なんでそりゃエキセントリックな様子だけど、セクシャリティに関していろんな属性の人が集まっているんだから決してマイノリティばかりが集まっているわけではないんだろう。ストレートもいるし元N.Y.市長(ゲイ)もいる。
だからぼくらだって今現在の自分に十分に充足していないのだったら、ショートバスにいたってそんなに不思議ではないはず。そう、だからこの映画はココロとカラダの事を描いたとても真面目な映画なのです。
・・・婚外交渉を否定したカントなら9.11後の我々のこの状況を見てなんと言うだろうか?
<追 記 1>
威張っていえることではありませんが、海外サイトのこの映画のストリーミング観たら、えらいことになっていました。日本版しか見たことない人は「本当に何してたか」わかんないまんまだと思います。
主役のカナダ系中国人の体当たりの演技に大島渚監督を思い出したが、彼女が途中で使うバイブの名前が「愛のコリーダ」で笑えた。
<追 記 2>
監督のジョン・キャメロン・ミッチェルは前作で『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』を撮った人で、役者を決めてから結構長い時間かけてワークショップをして、本人たちの投票で劇中のパートナーを選ばせたそう。あそこまでやらすなら、そりゃそうか。劇中の主要キャストには、実生活でもゲイカップルがいたりするそうな。
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