ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

濱口竜介 監督『ドライブ・マイ・カー』主演:西島秀俊

翻訳文体で日常会話を交わす奇妙な登場人物たちが無表情演技で自分や相手の心情を語って聞かせる「魂の再生」ストーリー。 タイトルにはなっているけれども、ちょっとレオス・カラックスやウォン・カーウァイ風味のシーンがあるだけでほぼ意味の無いドライブ…

マイケル・マン監督『コラテラル』出演トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス

ネトフリ、アマプラ、U-NEXTに観なきゃいけない未見映画が山程あるのに、もう何回目かわからないこの作品を観てしまいました。回数でいったら『パルプ・フィクション』の次くらいに観てると思います。 やっぱり上手い監督の映画の導入部の引き込み方は素晴ら…

トリビュート『つりが好き』河出書房新社

3月になったら釣りに行こうと思います。2月は寒い。2月に釣りに行くのは相当に魚釣りが上手なのか、かなりお好きな方だと思います。わたしは下手が理由で行かないくちです。 趣味で魚釣りをするくせに魚釣りにまつわる文芸作品を全くと言っていいほど読んで…

ジョーダン・ハーパー著『拳銃使いの娘』ハヤカワ・ポケットミステリ

自分が初めて買ったハヤカワ・ポケットミステリはデイヴィッド・ゴードン著『用心棒 』でした。しかも去年の話です。生まれてはじめてハヤカワ・ポケットミステリのこのタイプの本を手にとったのが去年なのです。ものを知らないというのは怖いもので「なんだ…

幸徳秋水 著『帝国主義』岩波文庫

120年前、明治34年(1901年)に海外情勢や世界史に関する豊富な知見を踏まえて、当時の明治政府がしゃかりきになって列強と肩を並べるべく邁進していた軍国主義、帝国主義を分析し批判した秋水の初の著作です。軍国主義、帝国主義の前提となる愛国主義なんても…

デニス・ルヘイン著『ザ・ドロップ』ハヤカワ・ポケットミステリ

ボストンが舞台のクライムノベル。雇われバーテンダーのボブが通りのゴミ箱に捨てられていた仔犬(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)を拾い育て始めたことから、少しずつ人生へのコミットメントを取り戻すが・・・というあらすじ。 野良読書家集団…

小川 糸 著『あつあつを召し上がれ』新潮社

『ライオンのおやつ』『食堂かたつむり』のタイトルだけはなんとなく知っていた小川糸を初めて読みました。食事に関する短編小説集です。 『忘れない味』に収録されていた中島京子『妻が椎茸だったころ』にどハマリしてしまった私は、『こーちゃんのおみそ汁…

平松洋子 編著『忘れない味』講談社

食文化にまつわるエッセイを中心に活躍している平松洋子が編纂したこれまた食にまつわる短編小説及びエッセイ集(益田エミリの漫画もあります)。 『もの食う話』『注文の多い料理小説集』と昨年より飲み食い関連のアンソロジーに当たりが多くて幸せを噛み締…

長浦 京 著『アンダードッグス』KADOKAWA

合わなかったです。残念。半分読んだところで「ピタっ」と進みが止まりました。 アンダードッグス・・・「負け犬」チームの機密情報強奪作戦が中国返還前夜の香港で繰り広げられる。そこへ招集された元農水省官僚の主人公はいかにして作戦を遂行し、生き延び…

平山夢明 著『独白するユニバーサル横メルカトル』光文社

キツい・・・これはキツいけど、噂に違わぬ傑作短篇集でした。 中盤に収録されている『オペラントの肖像』『卵男』はいずれも映画『ブレードランナー』『マイノリティ・レポート』アニメ『サイコパス』などに通じるSFサイコ・サスペンスで、『すまじき熱帯』…

藤井太洋 著『ハロー・ワールド』講談社

日本SF作家クラブ会長の池澤春菜氏がTBSラジオでお薦めしていたのがきっかけで購入したこの小説ですが、その経緯とカバーデザイン、タイトルからてっきりSFだと思っていました。 ・・・いや、SFなんでしょう。SFと呼んで間違い無いとは思うんですが、なんと…

都築響一 編『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』ケンエレブックス

「ROADSIDERS' weekly」というメールマガジンで連載されていた100人の寄稿者が書く「二度と行けないあの店で」がテーマのエッセイ集。638ページ。『東京の生活史』ほどではないですけど、なかなか分厚く、昨年末にようやく読み終えました。 この本の魅力はま…

映画『ザ・ランドロマット』(Netflixオリジナル)

監督スティーヴン・ソダーバーグ 出演メリル・ストリープ、ゲイリー・オールドマン、アントニオ・バンデラス なんちゅー贅沢なことを配信専用でやるんだよ、ネトフリ・・・。 邦題タイトルには「パナマ文書流出」が付いていますけど、そこはオマケみたいなも…

映画『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』ジョン・クラシンスキー監督、エミリー・ブラント主演

【ネタバレ、ネガティブコメント有り】 好きな映画です。悪くはないと思います。 だけどね・・・やおらスピーカーのAC電源ケーブルを「ぶらぶらしてたらこれからの絵的に邪魔だから!」と言わんばかりにニッパーでバチンと切っただけで電源要らずのポータブ…

映画『タレンタイム~優しい歌』ヤスミン・アフマド監督

マレーシア映画です。参加している映画グループでオススメされていたので鑑賞したのですが、素晴らしかった!噂通りの美しい映画です。 マレーシアが舞台ですが、まったりとした異国情緒を押す映画ではありません(私はもともとその先入観を持ってしまってい…

映画『空白』吉田恵輔 監督・脚本、古田新太、松坂桃李 主演

【あらすじ】はじまりは、娘の万引き未遂だった―。ある日突然、まだ中学生の少女が死んでしまった。スーパーで万引きしようとしたところを店長に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれたというのだ。娘のことなど無関心だった少女の父親は、せめて彼女の無…

ボストン・テラン著『音もなく少女は』文春文庫

9月30日時点で私の2021年文芸作品ナンバー1です(たいして数は読んでおりませんのに恐縮ですが)。いやはや・・・震えました。そしてほぼ一ヶ月と読み終えるまでの時間はとても長くかかりました(ボリューム自体は文庫版480ページです)。数ページをめくるご…

映画『ベイビーわるきゅーれ』阪元裕吾 監督

池袋シネマ・ロサにて口コミで盛り上がっている『ベイビーわるきゅーれ』を鑑賞しました。最近はすっかり引きこもっていたのと、前回スクリーンで鑑賞した『The Lighthouse』が辛過ぎて久しぶりの劇場になりましたが、評判通り満足度高い! いやー、面白かっ…

映画『デッド・ドント・ダイ』ジム・ジャームッシュ監督

Amazonプライムで鑑賞しました。 とてもじゃないですけど素直に丸呑みできる脚本じゃないです。キャスティングを決めてからそれぞれの俳優にあて書きしたようなストーリー。不条理とも破綻とも言えないよく分からない味わいでした。 映画として、脚本として…

映画『ザ・ファブル』江口カン 監督、岡田准一 主演

酷評が目についていたので映画版はスルーしていたのですが、コミック原作がとても気に入っているので映画版を鑑賞してみました。 これ、過小評価だと思います。面白かったです。前半のところで「命とは」の問答を安田顕と岡田准一でやりとりする大事なシーン…

角幡唯介 著『極夜行』文藝春秋

さすがの面白さでした。 著者本人がやり遂げた極地探検が桁外れな題材なのでそれはもう面白いに決まっています。しかもその探検家は元新聞記者で読ませる文章を書くものだから極上探検紀行になっています。クーラーの効いた部屋でアルコール片手に極寒の極地…

『未来からの遺言 -ある被爆者体験の伝記-』伊藤明彦 著、岩波現代文庫

凄い読後感の本です。 8月6日のあれやこれやで思うところがあり、2012年に復刊されるもすでにプレミア価格(定価920円→Amazon新品3,726円)になっているこの本を取り寄せ、昨日と今日で読み終えました。なんとか8月9日に間に合いました。 今まで太平洋戦争に…

タサン志麻 著『ちょっとフレンチなおうち仕事』ワニブックス

予約の取れない伝説の家政婦タサン志麻さんの本。テレビによく出ているみたいですね。僕はまったく知りませんでした。文化放送のラジオに出演されていたのを聴いて初めて知りました。 「ほぼ塩だけで味を決めるフランスの家庭料理」「フランス料理の基本は『…

増田 薫 著『いつか中華屋でチャーハンを』スタンド・ブックス

玉袋筋太郎もマキタスポーツもファンである自分が中華が嫌いなわけがない。 TBSラジオ「ライムスター宇多丸 アフター6ジャンクション」で取り上げらたことで知りまして本作を買って読んでみました。中華屋さんでチャーハンやラーメン以外の亜流メニューを食…

堀江敏幸・角田光代 著『私的読食録』プレジデント社

雑誌『dancyu』に連載されていたらしい食べ物にまつわる文芸作品の書評プラスエッセイ100回分のおまとめです。 あいにく堀江敏幸・角田光代両名の作品はひとつも読んでいませんが、さすが作家の引き出しは凄いなと感じる内容でした。見開きで連載1回分、1作…

吉村昭 著『白い航路(上・下)』講談社文庫 新装版

私が故郷の宮崎県出身のヒーローとしているのが安井息軒、上杉鷹山、小村寿太郎、高木兼寛の4人なのですが、吉村昭先生がそのうち二人、小村寿太郎『ポーツマスの旗』、高木兼寛『白い航路』を上梓されているのがなんとも誇らしい気持ちです。 高木兼寛を題…

チャック・パラニューク著『ファイト・クラブ』

デヴィッド・フィンチャー監督の映画版が良すぎて原作小説は全くケアしていなかったのですが、これがどうも米国文学の「新しい古典」と評されているらしいことを聞き及び、ブレット・イーストン・エリス著『アメリカン・サイコ』と同じタイミングで購入して…

映画『THE LIGHTHOUSE』ロバート・エガース監督

映画に殺されるかと思った・・・ 『THE LIGHTHOUSE』ロバート・エガース監督、ロバート・パティソン、ウィレム・デフォー主演 二日前の日曜日に観てきたのですが、ダメージが大きすぎて触れる気にもなれなかった映画です。興味本位で観るもんじゃないですね…

森鴎外『舞姫』

想像以上の男のクズの話でした。男前だろうと頭よかろうと、「こんおとこはすかん!(宮崎弁)」。金原ひとみに言わせると「オートフィクション」なんでしょうね、森鴎外の半自伝的小説。 主人公である太田豊太郎のドイツ人女性エリス(設定は未成年)の扱い…

高橋ユキ 著『つけびの村』(晶文社)

TBSラジオ製作のオーディオムービー『つけびの村』の原作がノンフィクションと知って読んでみました。 2013年7月21日、山口県周南市の山間にある限界集落で保見光成(事件当時63歳)が起こした、集落住民12人のうち5人が殺害された連続放火殺人事件を扱って…