ろぐの垂れ流し

LOVE定額の相手に着信拒否されたことあるか?!

『地球の音楽』山口裕之 橋本雄一 編、東京外国語大学出版会

たまには文学でもなく、エンターテイメントでもなく、実用書でもなく、こういう純然たる教養書を読むのもいいものです。 ・・・東京外国語大学の世界各地・各ジャンルの50名の専門家・研究者らが奏でる珠玉の音楽エッセイ集!(帯より) いやはや、スゴ本で…

高野秀行・清水克行『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』 集英社文庫

私の中では佐藤究→丸山ゴンザレス→高野秀行で繋がったノンフィクションライターの高野氏と中世歴史研究者の清水氏の書評対談本です。 かなり昔にHONZか何かで紹介されていて評判が良かったのを思い出して手に取ってみたのですが、噂通りに面白い凄本でした。…

『シナモンとガンパウダー』イーライ・ブラウン著、三角和代訳、創元推理文庫

作家の深緑野分氏がTwitterでお勧めしていたので手にとって読んでみましたが、たしかに面白い!設定がユニークなので、いつもはしない公式の内容紹介を引用します。 <内容紹介>「命が惜しければ最高の料理を作れ!」1819年、イギリスの海辺の別荘で、海賊団…

逢坂冬馬 著『同志少女よ、敵を撃て』早川書房

今年の夏休みに岸田総理が本作を読む予定だという報道があってすっかり興が冷めていたのですが、プーチン大統領が予備役の動員を決定しロシア国民が反対のデモをしているというニュースに触れたとき、自分の中のやりきれなさに整理がつかず、積読書棚から引…

『神は銃弾』ボストン・テラン著(田口俊樹 訳)、文春文庫

【あらすじ(背表紙より)】憤怒――それを糧に、ボブは追う。別れた妻を惨殺し、娘を連れ去った残虐なカルト集団を。やつらが生み出した地獄から生還した女を友に、憎悪と銃弾を手に…。鮮烈 にして苛烈な文体が描き出す銃撃と復讐の宴。神なき荒野で正義を追…

新井由己 著『とことんおでん紀行』凱風社

おでんのタネの「餃子巻き」 なにそれ!!?? みなさん食べたことあります? 私は九州生まれ、学生時代と新卒の一時期は関西で過ごし、現在は関東在住で酒場と飯屋をこよなく愛する中年おっさんですが、「餃子巻き」は見たことも食べたこともありません。 …

沢木 耕太郎 著『テロルの決算』(文春文庫)

2022年7月8日の安倍晋三元首相の銃撃殺害事件の報を受けて私がまず感じたのが、山上徹也容疑者の動機、背後関係その他の真相究明は捜査を待つとしてこの重大な事件を自分の腹にどう収めればいいのかという混乱でした。自分には現役国会議員が衆目の中で銃撃…

村田沙耶香『コンビニ人間』文藝春秋社

本作の主人公、18年間コンビニでアルバイトをして生計を立てている36歳の古倉恵子は「変わった人」なのでしょうか? 変わっている、変わっていない、というのを私という個人の価値基準で判断することが許されるとしたら「変わっている」と思いました。という…

町屋良平『1R1分34秒』新潮社

ボクシングを題材にした好きな映画がいくつかあります。安藤サクラ主演の『百円の恋』、フランス作品の『負け犬の美学』は大好きな映画です。プロを続けられなくなる年齢制限を前にタイトル戦にチャレンジする不器用な会社員ボクサーを追ったノンフィクショ…

漫画『事件屋稼業』関川夏央、谷口ジロー

エッセイしか読んだことがなかった関川夏央原作で、なんと!谷口ジロー作画の『事件屋稼業』というコミックスがあると聞いてさっそく古本を大人買いしました。チャンドラー作品と関係があるのかないのかはまだわかっていないのですが。 これは・・・格好いい…

ジェフリー・ロバーツ『スターリンの将軍 ジューコフ』

ロシアがウクライナに侵攻してすぐに黒川祐次『物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国 (中公新書)』を読みました。その時はこの戦争はすぐに終結するものだと思い込んでいました。 ところが悲惨な戦争は続きます。西崎 文子 他『紛争・対立・暴力――世…

トリビュート『つりが好き』河出書房新社

3月になったら釣りに行こうと思います。2月は寒い。2月に釣りに行くのは相当に魚釣りが上手なのか、かなりお好きな方だと思います。わたしは下手が理由で行かないくちです。 趣味で魚釣りをするくせに魚釣りにまつわる文芸作品を全くと言っていいほど読んで…

ジョーダン・ハーパー著『拳銃使いの娘』ハヤカワ・ポケットミステリ

自分が初めて買ったハヤカワ・ポケットミステリはデイヴィッド・ゴードン著『用心棒 』でした。しかも去年の話です。生まれてはじめてハヤカワ・ポケットミステリのこのタイプの本を手にとったのが去年なのです。ものを知らないというのは怖いもので「なんだ…

幸徳秋水 著『帝国主義』岩波文庫

120年前、明治34年(1901年)に海外情勢や世界史に関する豊富な知見を踏まえて、当時の明治政府がしゃかりきになって列強と肩を並べるべく邁進していた軍国主義、帝国主義を分析し批判した秋水の初の著作です。軍国主義、帝国主義の前提となる愛国主義なんても…

デニス・ルヘイン著『ザ・ドロップ』ハヤカワ・ポケットミステリ

ボストンが舞台のクライムノベル。雇われバーテンダーのボブが通りのゴミ箱に捨てられていた仔犬(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア)を拾い育て始めたことから、少しずつ人生へのコミットメントを取り戻すが・・・というあらすじ。 野良読書家集団…

小川 糸 著『あつあつを召し上がれ』新潮社

『ライオンのおやつ』『食堂かたつむり』のタイトルだけはなんとなく知っていた小川糸を初めて読みました。食事に関する短編小説集です。 『忘れない味』に収録されていた中島京子『妻が椎茸だったころ』にどハマリしてしまった私は、『こーちゃんのおみそ汁…

平松洋子 編著『忘れない味』講談社

食文化にまつわるエッセイを中心に活躍している平松洋子が編纂したこれまた食にまつわる短編小説及びエッセイ集(益田エミリの漫画もあります)。 『もの食う話』『注文の多い料理小説集』と昨年より飲み食い関連のアンソロジーに当たりが多くて幸せを噛み締…

長浦 京 著『アンダードッグス』KADOKAWA

合わなかったです。残念。半分読んだところで「ピタっ」と進みが止まりました。 アンダードッグス・・・「負け犬」チームの機密情報強奪作戦が中国返還前夜の香港で繰り広げられる。そこへ招集された元農水省官僚の主人公はいかにして作戦を遂行し、生き延び…

平山夢明 著『独白するユニバーサル横メルカトル』光文社

キツい・・・これはキツいけど、噂に違わぬ傑作短篇集でした。 中盤に収録されている『オペラントの肖像』『卵男』はいずれも映画『ブレードランナー』『マイノリティ・レポート』アニメ『サイコパス』などに通じるSFサイコ・サスペンスで、『すまじき熱帯』…

藤井太洋 著『ハロー・ワールド』講談社

日本SF作家クラブ会長の池澤春菜氏がTBSラジオでお薦めしていたのがきっかけで購入したこの小説ですが、その経緯とカバーデザイン、タイトルからてっきりSFだと思っていました。 ・・・いや、SFなんでしょう。SFと呼んで間違い無いとは思うんですが、なんと…

都築響一 編『Neverland Diner 二度と行けないあの店で』ケンエレブックス

「ROADSIDERS' weekly」というメールマガジンで連載されていた100人の寄稿者が書く「二度と行けないあの店で」がテーマのエッセイ集。638ページ。『東京の生活史』ほどではないですけど、なかなか分厚く、昨年末にようやく読み終えました。 この本の魅力はま…

ボストン・テラン著『音もなく少女は』文春文庫

9月30日時点で私の2021年文芸作品ナンバー1です(たいして数は読んでおりませんのに恐縮ですが)。いやはや・・・震えました。そしてほぼ一ヶ月と読み終えるまでの時間はとても長くかかりました(ボリューム自体は文庫版480ページです)。数ページをめくるご…

角幡唯介 著『極夜行』文藝春秋

さすがの面白さでした。 著者本人がやり遂げた極地探検が桁外れな題材なのでそれはもう面白いに決まっています。しかもその探検家は元新聞記者で読ませる文章を書くものだから極上探検紀行になっています。クーラーの効いた部屋でアルコール片手に極寒の極地…

『未来からの遺言 -ある被爆者体験の伝記-』伊藤明彦 著、岩波現代文庫

凄い読後感の本です。 8月6日のあれやこれやで思うところがあり、2012年に復刊されるもすでにプレミア価格(定価920円→Amazon新品3,726円)になっているこの本を取り寄せ、昨日と今日で読み終えました。なんとか8月9日に間に合いました。 今まで太平洋戦争に…

タサン志麻 著『ちょっとフレンチなおうち仕事』ワニブックス

予約の取れない伝説の家政婦タサン志麻さんの本。テレビによく出ているみたいですね。僕はまったく知りませんでした。文化放送のラジオに出演されていたのを聴いて初めて知りました。 「ほぼ塩だけで味を決めるフランスの家庭料理」「フランス料理の基本は『…

増田 薫 著『いつか中華屋でチャーハンを』スタンド・ブックス

玉袋筋太郎もマキタスポーツもファンである自分が中華が嫌いなわけがない。 TBSラジオ「ライムスター宇多丸 アフター6ジャンクション」で取り上げらたことで知りまして本作を買って読んでみました。中華屋さんでチャーハンやラーメン以外の亜流メニューを食…

堀江敏幸・角田光代 著『私的読食録』プレジデント社

雑誌『dancyu』に連載されていたらしい食べ物にまつわる文芸作品の書評プラスエッセイ100回分のおまとめです。 あいにく堀江敏幸・角田光代両名の作品はひとつも読んでいませんが、さすが作家の引き出しは凄いなと感じる内容でした。見開きで連載1回分、1作…

吉村昭 著『白い航路(上・下)』講談社文庫 新装版

私が故郷の宮崎県出身のヒーローとしているのが安井息軒、上杉鷹山、小村寿太郎、高木兼寛の4人なのですが、吉村昭先生がそのうち二人、小村寿太郎『ポーツマスの旗』、高木兼寛『白い航路』を上梓されているのがなんとも誇らしい気持ちです。 高木兼寛を題…

チャック・パラニューク著『ファイト・クラブ』

デヴィッド・フィンチャー監督の映画版が良すぎて原作小説は全くケアしていなかったのですが、これがどうも米国文学の「新しい古典」と評されているらしいことを聞き及び、ブレット・イーストン・エリス著『アメリカン・サイコ』と同じタイミングで購入して…

森鴎外『舞姫』

想像以上の男のクズの話でした。男前だろうと頭よかろうと、「こんおとこはすかん!(宮崎弁)」。金原ひとみに言わせると「オートフィクション」なんでしょうね、森鴎外の半自伝的小説。 主人公である太田豊太郎のドイツ人女性エリス(設定は未成年)の扱い…