監督: ジョン・ファヴロー
出演:ジョン・ファヴロー カール・キャスパー
ソフィア・ベルガラ イネス
ジョン・レグイザモ マーティン
スカーレット・ヨハンソン モリー
オリヴァー・プラット ラムジー
ボビー・カナヴェイル トニー
エイミー・セダリス ジェン
エムジェイ・アンソニー パーシー
ダスティン・ホフマン リバ
ロバート・ダウニー・Jr マービン
僕は料理映画が大好きです。洋食屋の倅として育った環境の影響が大きいのかもしれません。音楽と料理人とホールスタッフと客がお皿を通じてつながり合う臨場感が堪らなく好きなんです。
これまでに観た料理に関する映画で好きなものを三つ挙げろと言われれば・・・
ナンバー1は間違いなく『ソウル・フード』。素晴らしくバランスがいい。
ナンバー2は『ディナー・ラッシュ』。臨場感という意味ではずば抜けています。
ナンバー3はレストランが本来の舞台ではないのですが、ヒロインとの絡みで出てくるレストランの描写とジャズ・サントラが非常に優れていた『サイド・アウェイ』。駄目男応援作品。
そしてこの映画・・・いいですね。一位取っちゃったかも。
役者陣が素晴らしいです。
お恥ずかしながら主役のジョン・ファヴロー、奥様役のソフィア・ベルガラの二人はぜんぜん知らない役者さん。ただ、バイプレイヤーのすごさを見ると、敢えてのキャスティングではなかろうか?
って・・・監督&主演ではないですか!? 道理で!!!
ソフィア・ガルベラはセクシーで素敵です。役柄も意外といい人だし。
ジョン・ファウブローの演技は、包丁さばきのシーンでわざとよそ見させたりして「料理してます!」ってギミックも有りながら、全編にわたって安定した愛情溢れるキャラクターで好感度が凄く高かったです。
そう、なにせジョン・ファウブロー監督演じるカール・キャスパーの料理と息子に向ける愛情の映画なんです。
<ネタバレが始まります>
冒頭、息子と市場に同行するシーンで、ケトルコーンをねだる息子にシェフはこう言い聞かせるんです。「ケトルコーンの正体を知っているか?炭水化物の砂糖がけだ。この美しいフルーツを見ろ。こんなに美味しいフルーツがあるのにケトルコーンなんか食うな!」
その直後のカットがまた愛らしくて。
このおっさん、ほんとに食べ物が好きなんだな~、って感じさせます。
自宅マンションに結構な厨房設備を備えているカール。息子にホットサンドを作るシーンがあるんですが、その手つきが几帳面すぎて可笑しい。
『クレイマー・クレイマー』とはまた違った演出なんですけど、ここでの息子の反応がその後のストーリーに大きく影響してくるんです。
そして僕が一番感動したプロットは、息子が手伝いながら焼いたこの焦げたサンドから始まります。
こんな風に僕が子どもに教えてあげることがあるかな?
涙が止まらなかったです。
「パパは不完全な人間だ。欠点もいっぱいある。でも、料理は上手い。パパの料理でみんなを『少しだけ』幸せにしてあげられるんだ。だからパパはおまえに教えてやりたいんだよ。」
素晴らしいです。
料理と息子に対する愛情がオーバーラップした瞬間。
でも・・・すごく地味なカットで、盛り上げる演出も全然無し。
その時気付きました。この監督は超技巧的な映画を撮る人だなって。
バスに乗っているシーンを分割していったり、スマホで摂った動画を引用したり。
細かいことを言うと、料理人が腕に巻いているバンテージがリアル過ぎる。そうなんです。料理人って手傷が多いし腱鞘炎になりやすい。そういったことへの目配せは料理人への尊敬を感じさせてとても心地よかった。
最後に、黒髪のスカヨハは最高に素敵。途中で出てこなくなるのが惜しくて仕方ないですけど、本筋に残らない、背中を押すキャラとして彼女を使うなんて最高に贅沢じゃないですか!!
ジョン・レグイザモ・・・滅茶苦茶いいです。本当に申し訳ないですが、10年以上前に見た『SPAWN』以来。とんでもなく分厚いキャリアを積んでらっしゃる。
そしてロバート・ダウニー・Jr。ほんのちょっとしか出てきませんが、偏執的で可笑しくて嫌みな設定がたまらない!
すげー良い映画でした。